結論から言いますと、以前より「死ぬまでに一度着てみたい」と思っていた結城紬をどういうわけだか買ってしまいました。ぎえー!どうした自分!!
ことのおこりは、きくちいまちゃんの講演会。
銀座で開催される「本場結城紬展」に出演するとの情報をキャッチしたので、引きこもり生活でなまった身体をひきずりつつ会場へ。うぅ、太陽がまぶしい。
「久々のシャバ」ということで出かける前はちょっとドキドキしてたのですが、いざ行ってみればなんてことはない、休日の銀座はのんびり華やかでこちらまで楽しい気分に。そして肝心の講演は大盛況。とてもおもしろい内容に大満足し、あとは帰るだけと思っていた...のですが。
「せっかく来たのだから」と会場をぷらぷら見学していたところ、とぉーっても美しい色の反物に出会ってしまった!
あぁ、こんなにキレイな青、見たことない。春の空みたいに澄んだ色で、角度によっては少しグレーがかっているような。ひんやりしているようで温かみのある不思議な色。しかも、何気なく顔にあててみると似合うんだ、これが(と、自分で言ってしまう)。
サイン会を終えたいまちゃんや会場で会ったりおさんに「似合う、似合う」とおだてられながら悩むこと1時間。完全に瞳孔開いてましたが決意しましたYo!
そう、償却期間は長い方がいい。
何歳まできものを着られるか分からないけど、仮に60歳までとしたらあと22年。10年後に買ったら償却期間が12年しかなくなっちゃうもの。
...いやー、でもね。ハッキリ言って結城紬を買うなんて清水の舞台どころじゃない。完成後のスカイタワーから飛び降りるくらいの勇気が必要だよ、結城だけに(by きくちいま)。多分、私は今後このきものばかりを着まくっていくことになると思います。
購入を決め、その場で呉服屋さんに見本帳を見せてもらって八掛の色を吟味。美しいグリーンにしてもらうことに決定しました。仕立て上がりは秋。購入から手元に来るまでに季節を3つまたぐなんて、これが重要無形文化財の重みでしょうか(単にタイミングが悪いだけという説も)。
それにしても。
きものを着始めた頃からぼんやりと憧れを抱いていたとはいえ、まさか自分が着ることになるとは思ってもみなかった結城紬。今回、思い切って購入した理由は2つ。
ひとつめの理由は、結城紬の現物とそれが創られる工程をじかに見て、結城紬の魅力にとりつかれてしまったから。
背中を丸めたおばあちゃんが、桶にはった水の中で解いた繭から繊維を取り出して「真綿」をつくっていく。その隣ではこれまた小さなおばあちゃんが、唾液をつけた指で真綿から細い細い糸をつむぎだす。それを染色して機で織って...。たくさんの職人さんたちによる気の遠くなるような時間と手間と高い技術力が結集した反物。そこから仕立てられたきものは、はおるだけでふわっと柔らかく暖かく、何よりその軽さに驚かされます。
そしてもうひとつの理由は、今このタイミングで出会ったきものなら、着るたびにふくちゃんを思い出せると思ったから。
ふくちゃんが平均寿命くらい生きてくれたら、あの食いしん坊にかかる食費は結城紬の反物代じゃ済まなかった(笑)。ふくちゃんのご飯代で買ったきものだと思うと、ずっとずっと大事にできる気がします。
そうそう、おもしろいことに、反物に合わせて選んだ八掛の色は偶然にもふくちゃんの目の色と同じでした。
秋が待ちきれないよー。